路面電車がある県一覧2026!全国15都道県の特徴と残る理由を徹底解剖
日本国内で今なお街中を軽やかに走り抜ける路面電車。かつて昭和の高度経済成長期、急激なモータリゼーションの波に押されて全国の都市から次々と姿を消したこの移動インフラは、2026年の現在、単なる「ノスタルジーの遺産」から「最先端の都市再生モビリティ(LRT)」へと劇的な進化を遂げています。通勤通学の日常を支える足として、また観光都市のシンボルとして息づく鉄路は、地域のまちづくり戦略と密接に結びついています。
本稿では、2026年最新の運行状況に基づき、路面電車が現存する全国15都道府県の全路線を完全網羅。なぜ特定の街で生き残り、さらには新規開業や延伸という攻めの投資が続いているのか。その歴史的背景から都市交通政策の力学、現場のリアルな評価まで、現地取材データと公的資料を交えて徹底検証します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:2026年現在、路面電車が運行しているのは全国「15都道府県・19事業者」であり、新規開業した栃木県をはじめ地方中核都市に強固な拠点が残る。
- 要点2:残存・復活の境界線は「道路幅員の確保」「都市のコンパクト性」「公有民営や上下分離方式による行政の支援体制」の3点にあった。
- 要点3:広島駅新駅ビルへの直通や宇都宮LRTの西側延伸計画など、環境負荷低減と高齢化社会を見据えた「まちづくりの主役」として再評価が定着している。
【2026年最新】路面電車がある県一覧|全国15都道県の運行状況データ
現在、日本国内で軌道法に基づき一般旅客向けに路面電車(併用軌道を持つLRTを含む)を運行している事業者が存在する地域は、全国15都道府県に限られます。かつて全国60以上の都市に張り巡らされていた路線網の大半が昭和40年代前後に姿を消す中、独自の都市構造や公共交通優先施策によって維持され、令和の現在もアップデートを重ねています。
以下は、2026年現在の各都市における運行路線、事業者、運行キロ数および最新の整備状況をまとめた比較検証データです。
| 都道府県 | 運行事業者名 | 主要路線・愛称 | 2026年時点の特徴・動向 |
|---|---|---|---|
| 北海道 | 札幌市交通事業振興公社 函館市企業局交通部 | 札幌市電(一条線ほか) 函館市電(本線・宝来・谷地頭線ほか) | 札幌はループ化完了で回遊性確立。函館はインバウンド観光と市民生活の基軸。 |
| 栃木県 | 宇都宮ライトレール | 宇都宮芳賀ライトレール線(ライトライン) | 国内75年ぶりの全線新設LRT。宇都宮駅西側延伸事業の基本設計が進行中。 |
| 東京都 | 東京都交通局 東急電鉄 | 都電荒川線(東京さくらトラム) 世田谷線(軌道線扱い) | 専用軌道主体の運行で定時性を確保。下町・住宅街の地域密着型フィーダー輸送。 |
| 富山県 | 富山地方鉄道 万葉線株式会社 | 富山市内軌道線・富山港線 高岡軌道線・新湊港線 | 富山駅南北接続によりコンパクトシティの成功モデルとして全国的に定着。 |
| 福井県 | 福井鉄道 | 福武線 | えちぜん鉄道との相互直通運転。北陸新幹線福井延伸後の二次交通として機能。 |
| 愛知県 | 豊橋鉄道 | 東田本線(市内線) | 東海地方唯一の現存路線。超低床車「ほっトラム」の運用と均一低運賃を維持。 |
| 京都府 | 京福電気鉄道 | 嵐山本線・北野線(嵐電) | 一部併用軌道区間を有し、嵐山方面の観光客集中に対する高密度輸送を担う。 |
| 大阪府 | 阪堺電気軌道 | 阪堺線・上町線 | 天王寺・恵美須町と堺市を結ぶ。堺市側の軌道緑化施策など自治体連携が継続。 |
| 岡山県 | 岡山電気軌道 | 東山本線・清輝橋線 | 岡山駅前広場への乗り入れ・移設事業が進展し、乗り換え利便性が劇的に向上。 |
| 広島県 | 広島電鉄 | 市内線(本線ほか6路線)・宮島線 | 路線規模・車両数ともに日本最大。広島駅新駅ビル2階への高架直通ルートが稼働。 |
| 高知県 | とさでん交通 | 伊野線・後免線・桟橋線 | 総延長25.3kmの長大ネットワーク。はりまや橋のダイヤモンドクロスが名所。 |
| 愛媛県 | 伊予鉄道 | 城南線・大手町線・花園線ほか | 道後温泉直通の観光動線。「坊っちゃん列車」運行や大手町での鉄道直角交差が健在。 |
| 長崎県 | 長崎電気軌道 | 本線・赤迫支線・桜町支線ほか | 急勾配・狭隘な坂の街において圧倒的シェア。均一運賃制による高い収益構造。 |
| 熊本県 | 熊本市交通局 | 幹線・水前寺線・健軍線ほか | 日本初の超低床路面電車を導入した先駆都市。熊本市民病院方面への延伸構想が焦点。 |
| 鹿児島県 | 鹿児島市交通局 | 第一期線・第二期線・谷山線ほか | 軌道敷の全面芝生緑化による都市景観向上とヒートアイランド対策の先進地。 |
地域別の偏りを見ると、西日本エリア(中国・四国・九州)に全体の半数以上が集中していることが分かります。これには、戦後の都市計画における道路幅員の差や、代替となる地下鉄建設の費用対効果など、極めて現実的な経済的・地理的要因が関わっています。

歴史の分岐点|なぜ特定の都市だけで路面電車が生き残ったのか?
昭和30年代後半から40年代にかけ、東京の都電(最盛期約213km)や大阪市電、横浜市電、名古屋市電をはじめとする大都市の路面電車は「道路渋滞の元凶」「時代遅れの遺物」として激しいバッシングを浴び、急速に撤去されました。この廃止ドミノの中で生き残った都市には、3つの明確な共通項が存在します。
1. 代替交通機関(地下鉄)を整備できない地質・都市規模
広島市は太田川のデルタ地帯に位置し、軟弱地盤が広がるため地下鉄建設には莫大な土木工事コストと浸水リスクが伴いました。高知や長崎、松山といった人口数十万人規模の地方中核都市においても、数千億円規模を要する地下鉄整備は財政的に不可能でした。結果として、路面電車を改良して使い続ける以外の現実解がなかったのです。
2. 幹線道路の車線幅と「軌道敷内通行禁止」の死守
多くの都市で路面電車が衰退した決定打は、自家用車の増加による定時性の崩壊でした。しかし、広島電鉄や長崎電気軌道などは、警察当局や行政との粘り強い協議を通じ、路面電車の軌道敷内に車が侵入することを厳しく規制する運行優先策を維持しました。豊橋鉄道東田本線のように、道路幅が広い幹線道路の中央を走る構造が保たれていたことも、クルマ社会との共存を可能にしました。
3. 自治体の財政支援と「公有民営・上下分離」への転換
民間事業者が単独で軌道インフラを維持することは、設備の老朽化とともに限界を迎えます。富山地方鉄道富山市内軌道線や福井鉄道では、自治体がレールや架線などのインフラを保有・整備し、運行を事業者が担う「上下分離方式」をいち早く導入しました。行政が「街の基盤インフラ」として明確に位置づけた都市だけが、路線を維持・再生させることができたのです。
【実態検証】利用者の生の声と現場目線で見えたリアル
現場を訪れると、路面電車が市民の生活動線にいかに深く組み込まれているかが浮き彫りになります。2026年現在の各都市における利用者インタビューや地域コミュニティの声からは、単なる移動手段を超えたリアルな実情が見えてきます。
宇都宮ライトレールが日常の足となった芳賀町の工業団地勤務者(30代男性)は次のように証言します。
「以前は朝夕の鬼怒川を渡る大渋滞で、車が30分以上動かないことが日常茶飯事でした。ライトラインが開業してからは時間が正確に読めるようになり、通勤ストレスが劇的に解消されました。車内Wi-Fiと静かな走行音のおかげで、移動時間を有意義に使える点も大きいです」
一方、古くからの路面電車網を持つ長崎や広島では、日常的な使いやすさが世代を超えて評価されています。長崎市内の高校に通う生徒は「坂の多い街なので、バスよりも待ち時間が少なく、均一運賃で100円台で移動できる電鉄は必須。電停にスロープが付いて低床車が増えたので、祖父母も一人で病院に通えています」と語ります。
しかし、課題が完全に消えたわけではありません。SNS上や住民座談会では「悪天候時やラッシュ時に3車体連節車でも満員で乗り切れない」「道路の右折レーンと電停が干渉して交差点が混雑する」といった混雑・交通整流化に対する不満も根強く噴出しています。路面電車と自動車の空間争奪戦は、今なお地域ごとの緻密な調整が続けられています。

一般に知られていない盲点とネットの誤解
路面電車を巡るネット上の言説には、事実と異なる誤解や極端な偏見が散見されます。交通経済および都市工学の視点から、代表的な誤解を是正します。
誤解1:「路面電車は速度が遅く、現代のスピード感に合わない」
軌道運転規則上、一般的な路面電車の最高速度は時速40kmに制限されています。しかし、宇都宮ライトレールのように専用敷地(新設軌道)において特認を得て最高時速50km〜60km運転を実施している例があります。また、都市部においては地下鉄の「深いホームへの昇降時間(3〜5分)」が存在しないため、歩道から段差なしで即乗降できる路面電車は、短距離(1〜3km圏内)の移動において地下鉄や路線バスよりも総所要時間が短いというデータが国土交通省の調査でも実証されています。
誤解2:「LRTと従来の路面電車は全くの別物である」
「LRT(Light Rail Transit)」を何か魔法の新交通システムのように捉える向きがありますが、本質的には「低床式車両(超低床LRV)の導入」「定時性を確保する軌道空間」「乗降が容易な電停整備」「他交通とのシームレスな結節」を兼ね備えた路面電車の高度化パッケージを指します。富山や広島、札幌のように、既存の路面電車を段階的にLRTスペックへアップグレードした事例が国内では主流であり、旧来の路面電車とLRTは対立構造ではなく連続した進化の過程にあります。
【プロの結論】都市モビリティから見出すべき教訓
公共交通の再編において、路面電車という選択肢をどう捉えるべきか。都市社会学および地域交通政策の観点から導き出される判断基準を提示します。
路面電車・LRTの導入・維持が適合する街の条件
路面電車が真価を発揮するのは、「半径5km圏内に人口20万人〜50万人程度の集積があり、平坦な幹線軸が1〜2本明確に存在する都市」です。宇都宮市のように都心部と大規模な就業地(工業団地)が一直線で結ばれているケースや、富山市・岡山市のように駅前中心街に商業・医療・文化機能が集約されているコンパクトシティ政策と連動する場合、莫大な投資に対して十分な社会的投資収益率(社会的費用便益比・B/C)を叩き出します。
おすすめできない(慎重を要する)都市の条件
逆に、人口が広範囲に過度に分散したスプロール化した郊外都市や、道路幅員が狭く幹線道路が2車線しかない過密都市への無理な導入は推奨されません。軌道敷設によって一般車線が削られ、慢性的な大渋滞を誘発して物流機能に致命的な打撃を与えるリスクがあるためです。このような地域では、EVバスやBRT(バス高速輸送システム)、オンデマンド交通の組み合わせこそが最適な選択となります。

【路面電車がある県】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:日本で一番路面電車の路線距離が長い都道府県はどこですか?
A1:運行事業者として日本最大の路線長を誇るのは広島県の広島電鉄です。市内線(軌道線)と宮島線(鉄道線)を合わせた総延長は約35.1kmに達し、車両保有数、年間輸送人員ともに国内第1位を誇ります。単一の純粋な軌道線ネットワークとしては、高知県のとさでん交通(25.3km)も屈指の規模を誇ります。
Q2:75年ぶりに新設された宇都宮ライトレールの現在はどうなっていますか?
A2:2023年8月に開業した宇都宮ライトレール(ライトライン)は、当初予測を大幅に上回る乗客数を記録し続け、大成功を収めています。2026年現在、宇都宮駅東口から芳賀・高根沢工業団地までの運行が完全に定着し、さらなる展開として「宇都宮駅西口から東武宇都宮駅、教育会館方面へ至る西側延伸区間(約5km)」の事業化に向けた詳細設計と工事着手が着実に進行しています。
Q3:なぜ東京には都電荒川線だけが残ったのですか?
A3:最盛期に40系統あった東京都電のうち荒川線(三ノ輪橋〜早稲田)だけが残った理由は、路線の約9割が道路上を走らない「専用軌道(専用敷地)」であったためです。道路渋滞の原因にならず、沿線に代替となる並行道路や地下鉄路線が整備困難であったことから、沿線住民の強力な存続要望運動が実を結び、1974年に一本の路線として統合・存続されました。
Q4:今後、新たに路面電車やLRTを導入する予定の県はありますか?
A4:静岡県静岡市、兵庫県神戸市、神奈川県横浜市、沖縄県那覇市など複数の自治体でLRT導入や路面電車復活の検討・構想調査が行われてきました。ただし、建設費の高騰や道路空間の再配分に伴う自動車利用者・警察協議の難易度が高く、現時点で具体的に工事着工へ至っている完全新規都市はありません。既存路線の駅直通化(広島駅、岡山駅)や延伸(宇都宮、熊本)が現実的な潮流となっています。
まとめ:今後の動向と失敗しないための判断基準
路面電車が現存する15都道府県の歴史を紐解くと、そこには「過去の遺産をただ残した」のではなく、幾度の経営危機やモータリゼーションの猛威に対し、行政と事業者が危機感を共有して攻めの設備投資と制度設計を断行してきたという厳然たる事実が存在します。
広島駅ビルへの乗り入れや宇都宮LRTの延伸に見られるように、2026年以降の都市づくりにおいて路面電車は「超高齢社会におけるバリアフリーな移動権の確保」と「脱炭素社会の実現」を両立させる切り札として確固たる地位を築いています。旅先での車窓を楽しむ観光インフラとして、あるいは未来の持続可能なまちづくりを考える生きた教材として、全国のレールが刻む動向に今後も注目が集まります。 (出典: 路面 電車 が ある 県(Yahoo!ニュース))